法律相談:外国との取引で訴訟をせずに代金回収を行った池田崇志弁護士の事例インタビュー
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スペシャリストインタビュー - 弁護士 池田崇志 -
イギリスの会社の依頼で、日本の会社から未収代金を回収。
為替リスクを回避して、訴訟をせずに代金を回収する方法とは?

-「メルボルン事件※1」や「姫路冤罪事件※2」などの国際的な事件や外国人裁判を 得意とされる池田弁護士ですが、ビジネスの案件で外国とのやり取りが生じる案 件を扱われることはありますか?
そうですね。最近取り扱ったケースとしては、イギリスの会社から、日本の会社に対する売り掛け債権の回収を依頼された件があります。
この依頼主のイギリスの会社A社は、全世界の銀行の本店・支店の名簿(支店長などの名前が掲載されている)を売っていて、日本への販路が無かったので、日本の出版社Bと買取りという形で契約して名簿を売ってもらったのです。それが数年前のことです。銀行の統廃合が激しい時期で、銀行の支店が激減して名簿が売れなくなりました。 出版社Bは買取りの契約をしていたので、売れない分も代金を支払わなねばならず、A社(イギリス)への支払いが滞りました。
-そこでイギリスのA社は代金の回収を、日本の池田先生に依頼されたのですね? どのように解決されたのですか?
私が直接B出版社と交渉しましたが、すぐに支払える状態にはないということだった んです。そこで、分割払いで支払ってもらうにしても、どのような形で支払う約束をしたら良いかという問題になりました。 A社とすれば、B社が支払しないのはけしからん、ということで、すぐに訴訟をしたい という意向もありました。しかし、訴訟をすると訴訟費用や弁護士費用がかかる。とくに東京の渉外事務所なんかに頼むと、請求額の2・3割は、弁護士報酬で持って いかれますよ、といった説明をしました(笑)。

私は、B社の支払約束について公正証書を作成し、「強制執行認諾約款つき」に した方が早いし、安上がりであることを、A社に説明しました。裁判をして勝つことで、最も大きなメリットは、結局、「債務名義」を得ること、つまり相手方が支払わないときに強制執行できることにあるのですが、この効果は、何も裁判をしなくても、強制執行認諾約款つきの公正証書を作成すれば、得られるからです。
今回の場合、B社は支払義務を認めているので、裁判の手間をかけることもなく、 また幸いにも代表者2人の個人保証を取り付けることもできました。その結果、裁判 手続をとることなく、公正証書を作成することで解決できました。
A社は、訴訟費用を負担せずに済んだのです。
-繰り返しの質問になるかも知れませんが、公正証書は、普通の契約と違うのですか?
普通の契約書だと、いくら契約書で書かれた権利は認められても、強制執行する 力はないのです。普通の契約書の場合、支払いが約束どおり履行されなかった場合 は、あらためて裁判をして勝訴判決をもらわなければ「債務名義」はないので、強制 執行を行うことはできないのです。
これに対して、強制執行認諾約款付きの公正証書の場合、約款自体に強制執行 できるという効力が付与されています。だから、相手方が約束どおり支払わない場合、(裁判をするまでもなく)強制執行を行うことができます。
-この案件の場合、具体的にはどういうことですか?

B社から確実に分割で払ってもらえるかどうかわからなかったので、この強制執行 認諾約款付き公正証書を作成し、B社の代表者2人に保証人になってもらいました。
もし支払いを怠った場合は、B社の会社の財産、あるいは保証人になった代表者2人の財産を差し押さえることができるのです。
-なるほど。裁判の判決と同じ効力を公正証書に持たせることができるのですね。
ところで、外国との案件ということで、何か気を付けなければならないことや、国内 で処理できる依頼との相違点などはありますか?
今回の件では、B社は、A社に対して、代金債務をポンド建てで支払うことになって いました。
イギリスのA社がB社から本来支払いを受けるはずだった時期は円高だった んですが、その後、非常に円安の状態になりました。このため、ポンドで同じ金額で あっても、契約当時よりも相当大きな額を支払わなければならなくなりました。つまり 為替差損が発生し、A社にポンド建てで支払われると、B社は大きな損をしてしまう。
それで、為替リスクのヘッジとして、A社と私の間で以下のような約束をしました。 私が、A社の代理人として、B社との関係で上記のとおり、公正証書を作成し、ここでは、円建てで支払ってもらうようにする(その金額は、上記の契約当時のレートと までは 行きませんでしたが、現在のレートの中間点あたりを採りました)。
そして、分割払いの支払時期になって、B社が私の管理口座に振り込んできたら、 その旨を直ちにA社に連絡することとし、私の管理口座でプールしておく。円高になり、 A社から送金依頼の通知が来た場合には、その通知(メール)を受け取って48時間 以内にイギリスポンドに換金して送金するというものです。
もちろん、こうした方法をとるには、A社との信頼関係を築いておかねばなりません。
-そうすると、為替リスクを回避できる訳ですね。 このような海外でのやり取りなど、英語でのコミュニケーションはどうされているの ですか?
事務所に英語の堪能な職員がおります。
私自身も英語でやり取りすることもあります(笑)

-さすがですね。職員の皆さんも語学が堪能な方が多いようです。
本日はどうもありがとうございました。
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